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建物が朽廃したら借地権は消滅するか①

2019年12月21日「土曜日」更新の日記

2019-12-21の日記のIMAGE
改正前の借地法では「借地上の建物が朽廃すれば借地権は消滅する」ことになっていましたが、改正後の借地借家法ではこの条文は削られたと聞きました。建物が朽廃しても借地権は存続することになったのでしょうか。■朽廃とは何か朽廃とは、社会通念上、建物としての社会的・経済的効用が失われる程度に腐朽、損壊することであるとされています。旧借地法第二条第一項但書によって、朽廃により借地権が消滅するのは、当事者間で当初の契約期間や更新後の存続期間を定めなかった場合、期間は定めたが法定の最短期間より短くて無効とされた場合に限られています。有効な契約期間が定められている場合には、建物が朽廃しても期間満了までは借地権は消滅しません。しかし、朽廃という概念は漠然としており、判例の定義をもってしてもどのような状態が朽廃で、どの程度ならそうでないのかということを具体例で客観的に判断することはかなり困難です。また、「借地上の建物に通常の修繕の域を超える大修繕をした場合において、その建物の築造後の経過、修繕前の状況、修繕の実態、修繕当時の老朽の度合い等の諸事情を勘案すれば、その借地契約は遅くともその修繕前の建物が朽廃すべかりし時期に終了する」(最高裁昭四二・九・二二とされていますが、このように大修繕が加えられると、いつが朽廃すべかりし時期であったのかという判断はいよいよむずかしくなります。■朽廃しても借地権は消滅しないそこで改正法では、借地権の消滅という重大事項の判断に、このような暖昧な概念を使用するのはやめることにしたのです。その結果、改正法施行後に成立した借地権については、建物が古くなって使い物にならなくなっても、それだけで借地権が消滅するということはなくなりました。平成四年の八月以降に借地契約が結ばれ、建てられた建物が朽廃するのは、早くても平成四○年以降になるでしょうから、それまでこのことが問題になることはほとんど考えられません。建物の朽廃は、期間満了時の地主の更新拒絶に要する正当事由の問題として扱われることになります。

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