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改装物が現存しなくても有益費は返すべきか

2019年12月15日「日曜日」更新の日記

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賃貸マンションを貸している者です。先日、そのうちの一軒から出火して都合三棟が延焼してしまい、三軒とも賃貸借契約を解除することになりました。ところが、そのうちの一軒の借家人が出て行くにあたって、「家主さんの承諾を得て半年前に行ったトイレと洗面所の改装費用五○万円を返してほしい」といってきました。むろん、これらの設備はもう使いものになりません。それでも応じなければなりませんか。■陳腐化や天災の場合は家主に有益費償還義務はないこれらの費用は通常であれば有益費として償還請求が認められることもあるでしょう。しかし、家主に有益費の償還義務が生じるのは、家主が借家人の有益費支出によって現に利得している場合に限られます。つまり、長期年月の経過によってその改良が陳腐化してしまい、まったく価値がなくなってしまった場合や、ご質問のように火災やガス爆発、地震等の原因によって改良による価値増加分が現存しない場合には、家主には有益費償還義務はなく、借家人の請求権は消滅したものと考えられます。したがって、あなたは借家人の請求に応じる必要はありません。なお、このような価値増加部分が滅失したのが家主の火の不始末など家主の責任による場合には、公平の見地からして借家人の有益費償還繭求権は消滅しないと考えられます。■不可抗力による場合は有益費償還謂求権は消滅するしかしそれ以外、つまり借家人の責任による場合はむろんのこと、家主、借家人以外の第三者の責任によるものであったり天災等の不可抗力によって価値増加部分が滅失してしまった場合には、借家人の有益費償還請求権は消滅すると考えられます。なお、借家人が行った賃貸物件の増改築部分が、家主に返還される前に家主・借家人いずれの責任にもよらない類焼によって焼失した場合には、特段の事情のない限り、借家人の増改築部分に関する有益費償還請求権は消滅するとした最高裁判例があります(最高裁昭四八・七・一七)。<借地契約においても修繕費が問題になることがあるか>修繕費の負担で操める例はとくに借家契約で多いようですが、借地契約でも修繕費が問題になることがありますか。修繕費が問題になるのは大抵が借家契約においてですが、借地契約においても考えられないことはありません。たとえば、崖の上にある借地で、地盤がゆるんで崩落の危険性があるという場合に必要な防護壁を設けるとか、土砂崩れで土地の一部が流出した場合に盛土をするというような例がそれにあたります。また、道路の改修とそれに伴う隣地の盛土のために借地が窪地になった場合、そこに盛土をする費用は必要費であるとした判例もあります(大審院昭一二・二・一六)。

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