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借家人の失火による修繕費は借家人に請求できるか

2019年12月5日「木曜日」更新の日記

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家を貸していますが、借家人の火の不始末により火事になりました。天井、壁、床、建具等に大規模な修繕が必要となりましたが、その費用は借家人に請求できますか。■借家人に責任のある場合はその費用を請求できる家主に対して修繕費の償還を請求できるかどうかは、その修繕が必要となるに至った原因の責任がどこにあるかによって決まります。責任の所在については次の四つに区別できます。①年月の経過や地震や台風等の不可抗力にある場合②第三者の過失による場合(たとえば、車が突っ込んできたため借家が壊れた場合等)③家主の過失による場合(賃貸併用住宅で家主宅から出火した場合等)④借家人の過失による場合借家人にその責任がある場合には、家主は当然、借家人にその費用を請求することができます。借家人には、建物の用法にしたがって善良なる管理者としての注意をもって使用すべき義務があるのですから、その義務違反によって生じた損害は賠償しなければなりません。■信頼関係を破壊した場合は契約を解除することができるご質問のケースはまさにこれに該当します。家主は借家人の不注意による火災によって生じた損害(天井、壁、床、建具等の修繕費)を全額借家人に請求することができます。また、それだけでなく、その失火が家主、借家人間の信頼関係を破壊するに至ったと認められる場合には、たとえ借家を使用継続することが可能であっても借家契約全体を解除することができるとされています(最高裁昭四七・二・一八)。火災は借家という財産にとって最も重大な脅威ですから当然といえます。これに対して、焼失の程度が軽微で信頼関係を破壊するには至らないといえる場合には、契約の解除は認められません(最高裁昭三六・七・二一)。なお、「失火ノ責任二関する法律」(いわゆる失火責任法)によれば、失火者に重過失がない限り、火災により類焼した者から失火者に対して損害賠償を鯖求することはできないとされています。これは、火元となった者に火災によって生じたすべての損害を賠償させるのはあまりに酷なので、不法行為責任の例外を規定したものです。しかし、家主が借家人に対して損害賠償および修繕費を請求することは、この法律によっても妨げられません。家主が借家人に対して損害賠償を請求できるのは、借家人の不法行為に基づくものではなく、借家契約の債務不履行によるものだからです。

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