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買った土地にいる借地人に対する明渡しの請求は

2019年5月9日「木曜日」更新の日記

2019-05-09の日記のIMAGE
土地を買いましたが、借地入が家を建てて住んでおります。借地人は家の登記をしてないから私が買い取れば明渡しを求めることができると思いますが、いかがなものでしょうか。不動産の賃借権は、その不動産の登記をしないと、不動産を買い取り、その旨の登記をした者には対抗できませんし、また、明け渡さなければならないというのが民法の原則です(民法一七七条)。ですから土地を賃借している者は、地主が替わった場合には、賃借権の登記がないと新地主に対抗できず、明け渡さなければならなくなります。しかし、土地賃借人が、地主に賃借権の登記をして欲しいと申し出ても地主には、それに応ずる義務はありません。また、実際には、賃借権の登記がなされている場合は、少ないといえましょう。そこで賃借人保護のため、家屋を賃借している場合には、借主がその家屋の引渡しを受ければ、新家主に対抗できる(借地借家法三一条、借家法一条一項、現実に居住していれば、新家主に対して借家権を主張できる)とされていますし、土地を賃借している場合には、借主が、その土地上に建てた家に自己所有名義の登記(保存登記、表示登記でもよい)をすれば、新地主に対抗できる(借地借家法一〇条)とされています。ところが、ご質間の場合は、土地の賃貸借契約の登記のない場合で、しかも、その借地の上の建物にも登記がない場合ですから、土地の持主が替わると借地人は賃貸借契約の存在を対抗できないことになり、あなたのお考えの目的は達せられるはずです。しかし、これは誠に危険な解釈で、借地人が新地主に対抗できなくなることを知って土地を買い受けた場合、事情いかんでは権利の濫用だとして新地主の明渡請求を認めない、という下級裁判所の判例が非常に多く存在することを知っておかなければなりません。特に、これを利用して一儲けしようなどという魂胆があって買い受けたのならば、なおさら権利濫用とされる可能性が多いわけです。もちろん、借地人が所有建物につき、登記を有しないことを知っていて買い受けたからといって、ただちに、明渡請求が認められなくなるわけではありません(最高裁第二小法廷・昭和四〇・四・二判決)。買い受けるに至った事情が問題なのですから、専門家の意見を聞くなどして慎重に行動してください。

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