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旧債振替禁止条項

2018年9月24日「月曜日」更新の日記

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(1)協会保証における保証免責のメカニズム。銀行Aが中小企業Bに貸付をする際,信用保証協会Cが行う協会保証においては,AC間には,まず保証の基本契約(いわゆるが存在する。これに。加えて,個別の貸付ごとに個別の保証契約(いわゆる『信用保証書』)がなされ,そこに被保証債務の貸付形式,金額,期間,返済方法等が保証条件として明示されている。「約定書例」には債権者Aが旧債振替(11条1号),保証契約違反(同条2号),故意・重過失による回収不能の招来(同条3号)を行った場合には,Cが保証債務の全部または一部の履行を免れるとする条項(保証免責条項と呼ぶ)が置かれている。このうち2号は一般的な規定であり,具体的には,信用保証書記載の貸付条件と異なる貸付を行った場合などが同号の違反に該たる。また3号は前述した民法504条の担保保存義務違反とも連続するものである。特に問題となるのは1号である。旧債振替禁止は約定書例3条がある以上2号によってもまかなえるともいえるが,中小企業の育成振興を図ろうとする信用保証制度の本来の目的に照らして,とくに信用保証協会の保証にかかる貸付金が,当該金融機関の既存の債権の回収を図るための手段として利用されると,中小企業の事業資金の調達に支障が生ずることを防ぐために置かれたものである。(2)旧債振替禁止条項の効力。旧債振替禁止条項の効力に関するリーディング・ケースが[16]最判である。そこでは次の二点が問題となった。(a)抗弁か当然消滅か。第一の問題は,約定書例11条1号による免責効が,旧債振替がなされた場合に保証債務を当然消滅させるのか,それとも保証協会による支払拒絶の抗弁の提出をまって初めて生じるのか,ということである。いずれの説を採ろうと保証協会自身は債権者に対して免責を求めることができるが,保証協会が任意に弁済して,求償金請求の局面に至るとこの両説の対立は実際上の意味を持つ。すなわち[16]最判の事案では,保証協会CのBに対する求償権について,求償保証人Gが存在し,代位弁済したCがGに対して求償保証債務の履行を求めた場合に,Gが旧債振替禁止条項違反を理由に,Cの保証債務の免責を,Gの求償保証債務不存在の前提として主張したものである。抗弁説を採ればCが免責を主張していない以上,保証債務は有効に存在し,Cの代位弁済は有効であって,Gもこの免責を主張できないことになる。これに対して当然消滅説を採れば,Cの抗弁の有無と関わりなくGは,保証債務の無効および求償権の不存在に基づいて免責を主張できる。最高裁は「信用保証協会からの特段の意思表示を要することなく,保証債務は当然に消滅」するとして,当然消滅説を採って,Gの主張を認めて,Cの求償保証債務の履行請求を否定した。

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