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担保保存義務とは何か

2018年9月23日「日曜日」更新の日記

2018-09-23の日記のIMAGE
AのBに対する1000万円の甲債権について,例えば保証人Cのような法定代位権者が存在している場合に,Aが故意または過失によって甲債権の担保(例えば600万円の価値をもつ乙不動産上の抵当権)を失った場合にはその限度で,例えば保証人Cは保証債務を免れる。504条が過失を問題にするということは,Aが自らの債権のために設定を受けた担保の取扱いに関してCに対して何らかの行為義務を負っていることを意味する。問題の核心はこの行為義務をどのような内容・程度のものと解するかにある。これを離れて,担保保存義務の制度趣旨とはなんぞや,それはたとえば法定代位権者の期待の保護にあるか,債権者の担保の不当な取扱いへの制裁にあるかなどといったことを論定することに意味はない。債権者Aはその権利である担保権をどのように取り扱うかについて自由である,という原則に,他の法定代位権者が存在する場面で,どのような制約が課せられるかということが,本講義の視点からは,債権回収の集団的秩序をどのように構想するかという問題の端的な表現として重要なのである。判例によれば,例えば譲渡担保権者が他の優先権ある債権者に対して「異議の訴訟」を提起しなくても故意・過失ありとされないが([4]最判。ただし旧厚生年金保険法62条による行政訴訟が問題となっている),担保権を適切に実行しない間に担保物の価値が下落した場合に,木造家屋のように年と共に価値が減少するのが通例である物を担保目的物としている場合には,特段の事情がない限り,同条の故意・過失ありとされる。通説は判例を支持するが,504条による代位弁済者の免責を判例が認める範囲はなお広きに失するとする批判的学説がこれに対立している。ここには債権回収の集団的秩序に関する構想の対立とそこに由来する上記行為義務の設定に対する態度の違いが示されているとみることができる。

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