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もったいない精神を大切に

2018年4月22日「日曜日」更新の日記

2018-04-22の日記のIMAGE
 「私たちは不必要にゴミを出し、捨てるのは嫌いだ。また、資源をムダにするような捨て方はしない。資源は有効に活用しなければならないし、自然の生態系を十分考慮したビジネスをしなければならない」  このように語ってくれたのは、アメリカはアリゾナ州スコッツデール市にある、今注目の環境を配慮したホテル、ハイアット・リージェンシー・スコッツデールの副社長ビルアイダ・オーレイ氏である。彼のコメントにはまさに、日本古来の。もったいない精神が感じられる。  このホテルはリゾートホテルで、客は世界中からやすらぎと憩いを求めてやってくる。本来、ホテルはぜいたくな空間とサービスが売り物だから、このホテルも当然その例にもれないはずだ。しかし、一見ぜいたくとは相反するはずのもったいない精神で経営しているとはどういうことか。  たとえばこのホテルは、客が到着したとき、玄関で客の車をあずかって順次駐車場に移動するバレット・パーキング・システムを採用している。これは環境の面ではムダなアイドリングを減らし、大気汚染を防止するということに役立っている。  室内に入ると、照明にはホテルが独自に開発した白熱灯による間接照明がふんだんに使われている。この白熱灯によって消費電力が大幅に削減され、間接照明のやさしい光は人にやすらぎを与えるという。エアコンは全室、全館集中モニタリングーシステムによって快適な状態になるようコントロールされており、宿泊客が自分で調整する必要はあまりない。しかも電力源は石炭で、これも独自の省エネシステムによって制御されている。  また、時間帯と季節にもよるが、自然の風を最大限取り入れることで、すばらしい居住性能も引き出している。その際にはエアコンはほとんど作動させないので、省エネにも大幅に貢献していることだろう。  レストランやバーに足を運ぶと、天然材でつくられたテーブル、イス、クロスがあり、外の自然との一体感をかもしだす。グラスはリサイクル材で、その他の食器類から紙製品にいたるまですべて再生可能な材料を使用したものから厳選されている。客が食べ残したものは、貧しい人や動植物に与えたり、肥料にしたりもできるよう、すべて分別して処理している。  庭園には生態系に配慮した池があり、スイミングプールもある。そして、その土地特有のフェニックスややしの木、数々の草花が人びとの目を楽しませている。ここでも自然環境を考えて化学肥料は使っていない。  ホテル全体にいえることだが、化学工業製品は極力避けている。客室内のベッドカバーにはコットン、じゅうたんには羊毛を使用。必要以上にゴミを出さないよう、シャンプー、リンスなどはチューブに必要なぶんだけ入れて毎日詰め替えている。また客にあまりさとられないように、シャワー・トイレの水量を4分の1ほど減らしたシステムを採用している。  その他にも数々の配慮や工夫が随所にほどこされ、もったいない精神の徹底ぶりがうかがわれる。  こうした環境との調和を考えた空間に身を置いて、天然材料の設備と接しながら自然との一体感を楽しむことで、心にもゆとりが生まれてくるだろう。実際、宿泊客の評判も上々で、たいへんな人気を集めているという。  このようにハイアット・リ・ジェンシー・スコッツデールでは、ホテルとしてのサービスともったいない精神がうまく融合されている。  私たちはもう一度、いかに地球のことを考え、資源を有効利用し、いかにムダをはぶき、経済的にも豊かになるか、そして自然素材を用い、自然とともに暮らすことがどんなにぜいたくなことかを十分に考えてみる必要がある。  日本古来から伝わるもったいない精神は、自然環境を考え、自然との調和した生活を実践するうえで必要な、いわば自然哲学なのである。

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