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「売買契約書」を読みこなす10のポイント

2018年4月20日「金曜日」更新の日記

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 マイホームを購入する前に、宅地建物取引主任者から重要事項の説明を受けてあらゆる疑問点を解消し、納得したらいよいよ売買契約を結ぶことなります。  そもそも売買契約とは当事者である売主が「この物件を買いませんか?」という意思表示をして買主が「買いましょう」と意思表示をすれば売買契約書を作らなくても契約自体は成立することになっています。  しかし、売買契約には様々な取り決めや約束事が必要になってくるため、これらを明確にして契約締結後のトラブルを避けるためにも契約書を作ることが常識です。  契約書の内容は法律に関することが中心となっているため、とっつきにくい印象をもつかもしれません。しかし住宅ローンを組んで高額なマイホームを手に入れるのですから、一字一句を正確に読みこなし、自分が思っている契約の内容通りかをしっかり確認する必要があります。  確認もせずに押印すると、たとえ契約書を交わした翌日に「契約を解除したい」と申し出ても、手付金が戻ってこないばかりか、売主に損害賠償を請求されることにもなりかねません。  売買契約書の読み方のポイントをあげていきます。 ①「売買契約の目的物の表示」について  購入するマイホームが特定されているかを確認します。この場合、不動産登記簿の「表題部」と重要事項説明書の中の「物件の表示」そして「登記簿に記載されていた事項」とを照らし合わせること。 ②「売買代金」と「売買対象面積」の取り決めについて  売買契約書には普通、登記簿上の不動産の表示を契約書に記載しますが、登記簿上の面積と実測面積は一致していないことが多くあります。たとえば登記簿上の面積100㎡という表示を信じて土地の代金が2000万円として売買契約を結んだ場合、実測の面積が80㎡しかなかったようなケースでは契約書に取り決めをしていないと「20㎡分足りない」と、後から代金の減額請求はできないことになっています。登記簿上の面積は、その土地の正確な大きさまで保証していないと考えられているからです。  ただし「売買契約上100㎡の土地を1㎡10万円で買う」といったように具体的な数量を基準として売買を行なった場合は、買主が数量が足りないことを知らないときには損害賠償と代金の減額を請求できます。また、不足した面積では予定していた建物が建てられないなどのケースでは契約を解除することもできます。  しかし実際の取引上、「登記簿上の面積が実測上の面積と一致していない場合でも代金の精算はしません」などと契約書に明記している場合が多くなっています。  いずれにせよ、登記簿上の面積と実測の面積がくい違った場合に後々トラブルが発生しないように取り決めをしておくことが大切となります。 ③「手付金の定め」について  手付金を支払って相手方が履行に着手した場合は、契約を解除できなくなってしまいます。ただし、自ら履行に着手したような場合でも、相手方が履行に着手していないときは、こちらから解除することはできます。 ④「中間金の支払い」と「所有権移転の仮登記」について  手付金の定めがある場合はいくら「手付けをうってあるから」といえども、契約後、相手方が履行に着手するまでは解除できるわけですから、買主としてはマイホームを確実に取得できるかどうか不安なものです。  そこで手付金を支払った後に、ある程度の中間金の支払いがなされたときは所有権移転登記の順位を保全する意味で仮登記をしておくと安心です。不動産の売買は登記を早い順でした者が勝ちとなります。つまり登記を最初にした者が所有権を取得するわけですから、「売買代金の半分程度が支払われた段階で登記の順位を確保しておく」意味は大きいというわけです。売主は買主が売買代金の全額を支払うまでは所有権の移転登記をすることを拒むことができるのですが、最終的には双方の交渉次第で仮登記はできます。  通常、頭金を支払っても、特別な取り決めがない限りなんら法的な効力はありません。頭金を手付金として契約する場合もありますから、このときは手付金による契約解除が可能となります。要は、売主との取り決め次第ということです。この定めがなされることにより、実質、売主と買主の利益が調整されることになります。  仮登記を前もってしておくと、売主がニ重売買をしたとしてもきちんとマイホームを取得することができることにもなります。 ⑤「マイホーム引渡し時期」と「所有権移転登記」について  所有権移転の時期は「売買契約書の作成時」「内金の支払い時」「マイホーム引渡しのとき」「売買代金完済のとき」などいろいろと考えられます。どの時期に所有権を取得するのかを明確にしておくことが必要です。  所有権移転登記時と残代金の支払い時、マイホーム引渡時を同時にしておくとトラブル発生の防止につながります。 ⑥抵当権などの登記の抹消について  購入するマイホームの土地・建物に抵当権、賃借権などの他人の権利がついている場合には、実際マイホームを取得したとしても利用が制限されることもあります。抵当権・賃借権の登記を抹消する取り決めをしておくことは欠かせません。  たとえば、購入した土地に抵当権が設定されていると、マイホームを手放さざるを得ないなんてこともあり得るわけです。抵当権が実行され競売されると、競売によって買い受けた人がその土地・建物の所有者となり、せっかくマイホームを取得していても所有権を失って不法占拠者として立ち退かなければならないことになってしまいます。 ⑦「危険負担」の取り決めについて  売買契約をしてから引渡しを受けるまでの間に、建物の場合は火事で燃えてしまうこともあります。また、阪神大震災のような大型の地震で契約後に建物が全壊してしまうようなこともあります。そこでこういった場合はどう処理するかを決めておく必要があります。  民法では土地や建物のような特定物については買主が危険を負担することになっています。これを民法上「危険負担についての債権者主義」といい、買主は火災・地震などの不可抗力で建物がなくなってしまっても代金を支払わなければならないことになっています。  しかしこれは現実の取引きの実例にあわず不公平だということで、このようなことを売買契約で取り決めて物件の引渡しまでは売主が危険を負担するように修正しています。  この取り決めがないと、マイホームを購入する契約をして、引渡しを受けるまでの間に火災や地震があったら、代金を支払わなければならないことになってしまいますから注意しましょう。 ⑧「公租公課」の取り決めについて  公租公課の中でも、主なものである固定資産税と都市計画税については毎年、その年の1月1日現在の所有者に対して課税され、原則として4月、7月、12月と翌年2月の計4回に分けて納税することになっています。その年の1年分は1月1日現在の所有者宛に納税通知書が送付されてくるようになっていますから、年の途中で所有者に変更があると、買主は「いつからの分を負担するのか」という旨をきちんと定めておく必要があります。  物件の引渡日をもって、それ以降は買主が負担するように定められています。たとえば売買契約書で「ただし買い主が負担する固定資産税の起算日を1月1日とする」といったように、その年度分の納税は誰が行なうのかとはっきりと決めておくとよいでしょう。 ⑨「瑕疵担保責任」の取り決めについて  最近、新築・中古にかかわらず「雨漏り」などの欠陥住宅が多発しています。このような欠陥が多くなっているのは、業者がよい建物を作るということよりも、いかに安く仕上げるかということに重点をおいているところからきているわけです。  しかし物件を購入する際には、なかなかこういった欠陥はわかりません。生活を始めてからわかるケースがほとんどというのが現状でしょう。そこで「もし欠陥があればどう処理するか」といったことも、契約書で取り決めておく必要があります。「瑕疵担保責任」とは欠陥が見つかった場合に「売主の買主に対する責任」についての取り決めです。ちなみに宅地建物取引業法では売主は「買主が目的物に隠れた欠陥があるという事実を知ったときから最低1年間は責任を負わなければならない」ことになっています。 ⑩「ローン特約条項」の取り決めについて  ローンを受けてマイホームを購入する場合には、万一、契約成立後にローンが受けられなくなったときのことを考えて、「前項の融資が否認された場合・・・」といった取り決めを明記しておきましょう。これを忘れると違約金を支払わなければならなかったり、手付金を没収されたりしてしまいます。  以上のように契約書の読み方をポイントごとに見てきましたが、実際、売買契約書は市販の用紙に必要事項を記入して作成するケースが多いようです。したがって、記入している箇所は何がなんでも確認しておかなければなりません。契約を締結した後に「気が変わった」と契約を破ることはできません。売買契約書の内容は納得いくまで理解する必要があるのです。

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