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豊かな老後のための4つの指針

2018年3月27日「火曜日」更新の日記

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 社会参加の必要性である。これはノーマライゼーションの原則とも密接な関係にある。老人はその生活を余生だとか引退後の空白などと位置づけず、積極的に社会との関係を保ち続けなければいけないということだ。考えてみれば、定年とか退官とかいう制度はあくまでひとつの社会的な決まりであって、その年齢に達したから心身の活動が急に弱まるわけでもない。政治家や学者をみているとよくわかる。社会から役割を与えられ、自分でないと果たせないという社会的使命をもつこと。これが長生きする条件でもある。以前ある医師が、東京で活躍している80歳以上の老人50人に対し、その生活態度を調査したことがあった。そこに共通してみられる事項の概要は次のようなものであったという。高齢になっても社会で活躍を続けるための条件と考えてもよいだろう。1社会的役割をもつこと。社会においてはっきりした役割をもっている。どんな小さなことでもよいから自分は社会から期待されているという仕事をすること。自分がやらねばならない、自分しかできないという使命感があればなおよい。そして人に頼まれたらなるべく応じていくこと。2趣味をもつこと。どんなに忙しいときでも息抜きをする。自分なりの趣味があればなおよい。85歳で亡くなったある老人は、毎5通の葉書を書いていたという。3友だちがいること。同性、異性を問わない。自由で愉快に話し合える友だちをもつこと。4運動をすること。散歩でも、軽い体操でも、花いじりでも何でもよい。自分に合った方法でからだを動かすこと。ところで、このような状態は、一般に地域社会の中に長く住み続けていなければつくり出せないものが多い。新しい土地や老人ホームにぽっと移ったのでは、道で会ってあいさつをしてもそれで終わりということになりがちだ。地域の中で孤立してしまう。現在の勤労者は働き蜂で、日頃から自分が住んでいる居住地との関わりをほとんどもたないという人が多い。こういう人は退職後、地域の中に新しい人間関係をつくろうとしてもなかなかむずかしい。地域の人々になじめず、とけこんでいけない。それで急速に心身が衰えたり、ボケたりする。老後も元気に暮らすためには、日頃から居住地の人たちと一緒になり、さまざまなかたちの住民運動、街づくり運動などに参加し、コミュニティーの一員としての役割をもつなどのつながりをつくっておくことが必要である。そうでないと、特に配偶者に先立たれた男は目もあてられない。「地域の中の粗大ゴミ」と化すおそれがある。各種の住民運動は主婦などの女性が中心になっている場合が多いが、勤労男性ももっと参加すべきであろう。それはいわば老後も元気に生活するための保険のようなものである。もし地域の中で高層マンンヨンや高速道路や商架鉄道や公害工場、そのほか居住環境を破壊するような施設の建設が計画されていて、お母さんたちが必死で反運動を続けているとしたら、男性もすぐ明日から応援にかけつけるべきだ。それは愛する家族の環境を守り、将来も住み続けるために必要な居住地を守り、同時にコミュニティーの一員としての市民権を確保し、長い老後の生活において社会的役割をもつための準備行動となるからだ。老人がなんらかの役割をもって社会に参加することは、個々の老人の立場からも、社会全体にとっても、大切なことだ。肉体的な老いはだれにもやってくるが、そういうハンディが生じても人間として生きることのできる社会的な環境を、日本でも今からつくっていかねばならない。

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