住みやすさを考慮できる在来工法
2018年3月20日「火曜日」更新の日記
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- 問題はほかにもたくさんある。
日本には昔から大工さんたちによって築き上げられ蓄積されてきた在来工法の伝統があるが、今これが捨て去られようとしている。
在来工法には、現在の建築素材となじまない、見た目がよくないなどの問題点も多いが、そこには日本人の生活の知恵が数多く盛りこまれている。
昔の大工・棟梁はひとつひとつの建築材料の性格に精通し、いわば材料と対話しながら使ってきた。
だが現在は新建材が氾濫している。
そのほうが安くて見栄えのよいものができるからだ。
出来合いのものを買ってきてはめこんでしまえばよいといった風潮もある。
最近プレハブ住宅の展示場へ出かけた。
建物はデラックスになり、床面積も250平方メートルといった大きなものがたくさん並んでいる。
ところが、それだけ広いのに階段に手すりがない。
しかも急勾配なので転びそうになった。段差がやたらに多い。
廊下が迷路のようになっている。
また、冬の暖房はどうするのだろうと首をかしげざるをえないホテルのような吹き抜け、安心して寝られないような寝室の中の薄いガラスの腰壁や、転落しそうなぽっかり開く窓、風通しをまったく配慮していない間取り・・・・等々が多いのに驚いた。
いくらショーウインドーの役目をもった展示場とはいえ、こんな住宅をつくっていたのでは、住宅文化の破壊者になってしまう。
「健康住宅」を標榜するあるメーカーの住宅には、サウナ風呂や健康器具を備えつけてある。
だが、段差が多く、すべりやすく、階段に手すりがない「健康住宅」であったのには驚いた。
健康な家とは、まず安全であること、冷暖房器具を使わなくてもある程度の暑さ寒さをしのげること、などが基本条件である。
それを怠ったのでは「健康住宅」の名が泣く。
ほかにも家庭内事故の原因になる要素がある。
たとえば風呂場。最近の風呂場はまるでホテルの浴室のようなものが多い。
コンクリートの床に浴槽をじかに置く。隣にトイレ、そしてドアがつく。
このドアがくせもので、風呂場で老人が倒れたりすると体にぶつかって開かない。
外開きにすれば、ドアにもたれかかった場合に風呂場の外へ投げ出されることになって、これも危険。
昔の大工さんなら風呂場の出入り口は必ず引き戸にしたものだ。
浴槽にしても、今日では大きく足を上げないと入れないが、そのときにすべって転ぶという事故が多い。
ケガをしないまでも、タイルの上のすのこやマッ卜ですべって、バランスを崩し、ひやっとした経験のある人も多いはずだ。
これなども昔は浴槽は埋めこみ式にして、2、30センチ足を上げれば入れたものだ。
階段。これも近頃の建て売り住宅などでは、階段ばかりつくっているメーカーから出来合いを買ってきて家の中にはめこむというのが一般的である。
こういう階段は幅も勾配も建築基準法ぎりぎりの寸法でつくられていることが多い。
手すりもない。
大量生産しているから、それを買ってきたほうが安くて早い。
手すりのないほうが階段の幅を狭く、床面積をすこしでも広くできる。
風呂場や階段はほんの一例にすぎない。
家庭内の安全は私たちの住み方や家のつくり方にも左右されることを知ってほしい。
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