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一見豊かな高層住宅の欠陥とは?

2018年3月17日「土曜日」更新の日記

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 日本のように地価が高いと、どうしても高層住宅がふえてくる。 建築技術が進歩したこともあって、最近はまるで一種の流行のようにあちこちに高層マンションや団地がつくられている。 建物は立派だし、見晴らしもよいのだが、この高層住宅には非常に問題が多い。  まず子どもが戸外へ出なくなる。幼児の場合だと母親が連れ出すのだが、母親が忙しかったりおっくうがったりすると一日中外へ出ないということになる。 4階建てぐらいのアパートだと、子どもが1人で出ていっても、母親が上からのぞけば見えるので安心していられるが、高層住宅の場合はそうはいかない。 幼児が自分でエレベーターのボタンを押せないことも、外出をさまたげている。  子どもが外へ行かないと、同年齢の子どもと遊べないから身体や言葉が発達しない。 ぜんそくが多くなる。 自宅にとじこもり、近隣への騒音を気にして活発な遊びも禁じられると、自閉性になる子どもも出てくる。  老人にとっても高層住宅はよい住まいではない。 友人・知人とのコミュニケーションが断ち切られるからである。  神戸市内のある被差別部落へ学生だちと調査に行ったことがある。 そこは現在では12階建ての高層住宅になっているのだが、昔の写真を見ると本当にきたない掘っ立て小屋で、厳しい生活がしのばれ胸が痛んだ。 高層住宅は2DKから3DK、エレベーターもあり各戸に水洗トイレ、風呂も完備している。  住民のみなさんに集まってもらい話を聞いて驚いた。 ほとんどの人が不満だらけなのである。 満足しているのは、個室が確保できた中3のお嬢さんだけ。 むろん建物が衛生的で立派になったことは喜んでいるのだが、高層化で隣近所とのつきあいがなくなったことが不満なのだ。 不満の特に多いのは老人で、背はすぐ外に出られ、隣の人と話をしたり友人を訪問したりできたのに、今はそれができない。 何度も外出するのは大変だから、外出の際には用件をメモしたものを持って出ているという。  老人は精神活動が活発ではないので、外出がおっくうなのである。 人通りのない廊下、鉄の扉などにもなじめないだろう。 外出をしなくなると、気力はますます減退する。  老人や子どもからコミュニケーションを奪い取り孤立化させる高層住宅は人間の住まいとして適当かどうか、再検討する時期にきているといえよう。 また、どんな商層住宅なら人間性を疎外しないのかを考えてみることも必要であろう。

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