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「自然」という名のブランド志向

2018年2月26日「月曜日」更新の日記

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 世の中、「自然志向」がブームになっています。有機農法の野菜や米が売れたり、エコロジーという言葉とともに自然環境に優しいさまざまな商品やサービスが普及していくのは、とても喜ばしいことなのですが、私が一つ気になるのは、「そういう自然志向の人たちは、本当に自然が好きなのか、それとも自然という名のブランドが好きなのか」という点なのです。  本当の自然の中で採れた野菜は、味や臭いにかなりクセが強く、今のビニールハウス栽培の野菜に慣れた人には、食べにくいと聞きます。 もちろん有機栽培ですから、当然虫が付いていることもあります。それが美味しい野菜の証拠でしょう。  しかしこのごろの自然志向の人の中には、「有機は好きだけど、虫はイヤ」とか「曲がっているキュウリは買わない」などと平気で言う方が少なからずいらっしゃるようです。そういう人たちは、自然が好きなのではなく、自然というブランドの商品が好きなだけなのです。  私は、だからといって、そういう人を責める気は毛頭ありません。願わくは、そういうタイプが存在するのを理解してほしいということ。そしていま、日本人は全体的に工業化製品に慣れすぎて、本物を見る目がなくなってきたという点を強調したいのです。というのは、これは住宅にも全く同じことが起こっているからなのです。  環境ホルモンだの、シックハウス症候群だのと、住宅の世界でも農産物の農薬と同じように、人体に悪い影響を及ぼす物質がいろいろと取りざたされています。以来、住宅も自然志向ブームが広がりつつあります。  「合板や集成材に使われる接着剤は、身体に良くないから、ムク材を使って欲しい」という要望の方も増えてきています。  確かに建材の輸入は、規制緩和が進み、安くて質のいいムク材も輸入しやすくなってきましたので、そういう方の要望には応えることができる環境にはなりました。問題は、ご本人がムク材のことを本当にわかっていないということなのです。これは、ちょうど「有機栽培は好きだけど、曲がったキュウリはイヤ」という人によく似ています。  つまり、ムク材は自然材なので、温度や湿度の変化で必ず曲がったり反ったりします。 ところが、ムク材を希望したお客様は、「ムク材はいいんだけど、反っては困る」と言い出すのです。  ムク材のフローリングは、ある程度反ったりしても、その凸凹感がまたいいのですが、自然の木目が好きでも、施工後は、あたかもタイルを敷き詰めたかのようにきれいに平らでなければ納得しないという人が結構いるのです。  ドアなどの建て付けにしても、ムク材では、必ず引っかかりやスキ間が生じてきます。 アルミサッシのように、いつでもピタッとはいきません。  また自然のものですから、当然手入れが必要になります。塗装なども塗り直す間隔が短くなる場合もあります。  健康のために、住宅も自然志向でいこうと本当に考えているのであれば、やはり、自然素材のいいところと、悪いところの両面をしっかり意識していただきたいのです。それがイヤで、やはりきちんとした精度の高い家に住みたいのであれば、何らかの工業製品を使うしか手はありません。  おそらく多くの人は、その中間の「ある程度自然の良さも享受したいし、でも精度の高さも欲しい」というところで悩むのだろうと思います。この自然と人工のバランス感覚は、夢のわが家を建てるにあたって考えなくてはならないことでしょう。

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