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「高齢者のため」は、必ずしも子どものためにならず

2018年2月25日「日曜日」更新の日記

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 家を建てる時は、誰しもが快適で便利で安全な家を望みます。そのこと自体もちろん当然のことですし、住宅を提供するメーカーとしても、みなさんがそういう生活を実現できるような家づくりを目指しています。  しかし、ここでは「本当にそれでいいのですか」と、あえてそのような生活に疑問を呈する内容の話を書きたいと思います。  現代に限らず、いつの時代も、子どもの非行や不良化は大きな社会問題になります。今は「いじめ」という言葉が一つのキーワードになっていますが、かつて「過保護」という言葉がクローズアップされた時期がありました。  「子どもが自分で乗り越えなければいけない障害を、親がいちいち手を貸してしまったり、除いてしまう。その結果、子どもは自分で何も解決できないまま育ち、何でも人に頼る人間になってしまう」  これが親の過保護という問題です。  その後、日常生活は、どんどん便利になってきています。と同時に、どんどん汚いものを排除し、無菌状態を目指すかのような清潔志向が社会全体に進んでいるような気がします。この状態は、子どもにとっては社会全体による一種の過保護状態なのではないでしょうか。  「お腹が空けば、コンビニで24時間いつでも暖かいお弁当が食べられる。公衆電話がなくたって、どこでも携帯電話から連絡できる。蛇口をひねれば、適温のお湯が流れ出てくる。冷房や暖房がいつもきちんと効いている」等々。  このような状態を当然として育った子どもたちは、本当に大丈夫なのでしょうか。あなたはどう思われますか。文明病とも呼ばれる花粉症患者は、急激に増加しています。ちょっとしたことで、従来からあったO157のような病原菌による食中毒も、問題になっています。現代社会の過保護状態のために、子どもたちが、いや子どもだけでなく大人も抵抗力が弱くなってきているのではないでしょうか。  話を住宅に戻しましょう。昨今、バリアフリー住宅といって、何かというと「高齢者に優しい住宅を」というのが一つの主要な流れになっています。  もちろん、これは大変素晴らしいことで、結構なことだと思うのですが、その家に一緒に子どもが住んでいる場合、その子にとってはどうなのかということが、私は多少気になるのです。  当社では、フィンランド住宅というものを輸入販売しており、最大の特徴は、高断熱・高気密のつくりで、家の中は24時間完全に温度と湿度を管理できるという点なのです。しかも、花粉などはフィルターで完全に除去しています。  このシステムを使えば、家の中は温度や湿度の変化が年間を通してほとんどなく、花粉などのアレルゲンもほとんどありません。高齢者にとっては、非常に優しい住みやすい家となることは確かです。  ところが、そんな環境で小さいときから育った子どもはどうでしょう。寒さに震えたり、暑くて汗を流したりしない分、寒さや暑さに対して抵抗力の弱い子どもにならないでしょうか。空気の汚れに対しての抵抗力はどうでしょうか。  それだけではありません。高齢者に優しい家では、なるべく細かいスイッチ類は排除して、センサーで自動的に作動する仕組みが増えています。  例えば、人が通ると自動的に照明が点き、いなくなると自動的に消えるとか、手を差し出しただけで適温のお湯が自動的に出てきて、使い終わると、これまた自動的に止まるという洗面所の給湯システムなど、すでにかなり出回っております。  そうした家で育つ子どもは、スイッチや蛇口を使ったらOFFにするというしつけができるでしょうか。家以外の場所で、お湯の蛇口を開いて、ヤケドすることはないでしょうか。  私は、何もここで「家や社会を少しは不便にしろ」などと言いたいのではありません。 あなたが家を建てる際には、「高齢者に優しい」という必要性と、「子どもの抵抗力やしつけ」という問題を、あなたの家族構成などに応じて、今一度バランスを取るように意識してほしいと望んでいるだけのことなのです。

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