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バリアフリーは高齢者のためだけにあらず

2018年2月17日「土曜日」更新の日記

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 時代の要請という点では、省エネ住宅だけなく、バリアフリー住宅も忘れてはいけないもの。私は21世紀の住宅は、省エネ同様、バリアフリーも重要なキーワードであると考えます。  バリアフリーというと、「段差をなくす」とか「手すりを付ける」とすぐに考えがちですが、何か重要なことを忘れてはいないでしょうか。バリアフリーという言葉は、本来、「障壁がない」という意味の英語です。つまり、「生活していく上での障壁、不都合がない家」がバリアフリー住宅なのです。  足の弱くなった高齢者や車椅子で生活する人の移動の障壁にならないように段差をなくす。これは確かに大事なことです。しかし、それだけではないはずです。  例えば、最近は、輸入住宅の影響もあって家をつくる際の基本寸法(モジュール)の考え方が変化しつつあります。お気付きになっていらっしやる方も多いと思いますが、日常生活では長さを表す単位はすべてメートル法を基準にしています。小学校の授業でも、オリンピックの陸上競技でも、メートルとかセンチとかキロメートルという単位に慣れ親しんでいます。  ところが、家のことになると、なぜか一間(いっけん)幅の間口とか、三寸釘といった尺貫法の単位が登場します。これにおかしいと思われたことはないでしょうか。  そうなのです。日本の住宅のほとんどが、まだこの尺貫法を基本単位として、つくられているのです。わかりやすく言えば、畳一枚の大きさ半間(91センチ)×一間(182センチ)が家の大きさの基準なのです。  廊下の幅は半間、リビングの大きな間口は一間、ドアの高さも一間、一間×一間の面積つまり畳2枚で1坪。こんな調子です。ちょっと年のいった職人気質の大工さんは、センチなどとはまず言いません。すべて何尺何寸ですし、持っている曲尺に刻まれた単位もすべて尺貫法による単位です。  このため木造軸組工法で家を建てると、この基準に合わないサイズで家をつくった場合、規格外として、割増価格を請求されることもあります。  ところが、当然のことながら輸入住宅には一間も一尺もありません。インチやメートルが基準です。廊下の幅やドア幅は1メートル、ドアの高さは2メートルといった具合です。 メートルが基準寸法なので、メーターモジュールと言います。日本でも、かつてプレハブ住宅は、メーターモジュールを使った方が規格品をつくりやすいという理由で採用していたのですが、実は、このメーターモジュールは、バリアフリーに非常に都合がいいという事実がわかったのです。  というのは、メーターモジュールでは、通常、廊下の幅が1メートルで、日本の半間幅の廊下よりも9センチだけ幅が広くなります。この9センチの広さが、車椅子の通行を格段に楽にするのです。というわけで、単なる基本単位の問題なのですが、最近ではメーターモジュールは、バリアフリーという言葉とセットにすることが多いようです。  このように廊下の幅を広げることもバリアフリー、車椅子での通行ということを考えれば、廊下を直角に曲げずに、斜めに通すことだってバリアフリーといえるでしょう。さらに、お風呂の浴槽の高さを低めにして入浴しやすくしたり、電気類のスイッチなどをわかりやすくかつ使いやすく配置するといった工夫も、すべてバリアフリーの考え方です。  そして忘れてはいけないのは、バリアフリーとは、高齢者や身体の不自由な方だけでなく、結局は誰にとってもバリアフリーなのだということです。  こうした、誰にとっても生活しやすいバリアフリーの家。これが、これからの家の主流になることでしょう。

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