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なぜ家の形は四角なのか

2018年2月11日「日曜日」更新の日記

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 あなたが主役になって、固定観念にとらわれない自由な発想で家づくりを始めるのはいいのですが、肝心の住宅そのものが、あなたの自由な発想にどこまで応えられるか。これがわからなければ、思い切ったプランを立てるわけにもいきません。そのため、この章では住宅そのものに焦点を絞って、新しい住宅事情をみていきたいと思います。  さて、ちょっと童心に返ってみてほしいのですが、もし何の先入観も固定観念もなく、頭の中を真っ白にして、どんな家に住みたいですかと問われたら、あなたはどのようにイメージするでしょうか。色や形はどうでしょう。子どもに尋ねたら、「アルプスの少女「イジのような三角形の屋根の山小屋」とか、「ディズニーランドにあるようなお城」などと、きっと大人が考えるよりもはるかにバラエティーに富んだ答えが返ってくるような気がします。  なぜこんなことを書いたかといいますと、大概の大人は、家というと「四角い形」という固定観念ができあがっていて、自由に発想しろといってもなかなか丸や三角や、はたまた五角形などの家は考えられないものだからです。  まっすぐの壁があると、その端は直角に曲がり、またまっすぐの壁があって直角に曲がる…すなわち四角の箱形が、すべての家の基本にあると考えてしまいがちなのです。  では、どうしてこんなにも多くの家が四角を基本にしているのでしょうか。おそらく、この問いに明確に答えられる人はいないのではないかと思います。  遠く歴史をさかのぼってみると、我々の祖先が最初に建てた家は竪穴式住居といわれています。これは、地面に穴を掘り、真ん中に柱を立てて、ちょうどテントのように屋根を葺いた家でした。面白いことに、この竪穴式住居には、正方形のものや長方形、そして円形のものなど様々な形の住居があったようです。  ところがいつの頃からか、家は四角になっていきました。それは、ノコギリや斧のような道具が発明された結果、木材を用いて家がつくられるようになるのとほぼ時を同じくします。  おそらく、ノコギリで木材を切り刻み、それを組み合わせて家をつくり上げるのに、直角に組むのが一番つくりやすかったのでしょう。いまでこそ精密なプレカットの機械を使えば、自由自在な角度で木材をカットできますが、当時はそんなわけにもいきません。そこで必然的に、家の形が四角くなっていったのではないでしょうか。  世界に目を向けてみましょう。例えばギリシアの遺跡を思い浮かべていただくとわかりますが、四角い石組みの建物がほとんどです。これもやはり素材は石やレンガなので、それを切り出し、積み重ねて建物をつくるには四角い方が圧倒的につくりやすかったのだと思われます。  家の形が四角いというのは、実は「単に素材の加工や施工がしやすかったから」という単純な理由でしかないようです。しかし例外もあります。例えば、イヌイットがつくる氷の家『イグルー』です。  これは、氷を四角いブロックに切り出しますが、それを積み重ねて、ドーム型の家にします。なぜわざわざ四角いブロックを積み重ねてドーム型の家をつくるのでしょうか。これには、そうせざるを得なかった理由があるのです。それは、過酷な自然環境にほかなりません。  氷点下何十度という寒さで、風雪に耐える頑丈な家が必要とされたときに、あのドーム型の構造が必然的に選ばれたのです。つまり、ドーム形は、四角い建物より表面性が小さく、熱が逃げにくいのです。しかも、ドーム構造は柱がなくても、ビクともしないほど丈夫な構造です。エスキモーたちは、過酷な自然環境の中で長年の経験と知識を集めて、あの形の家をつくるに至ったのでした。このことは、モンゴルの遊牧民族の家「パオ」にも同様に当てはまります。  以上のことから考えると、本来家の形というものは、基本的には素材が何であるか、そしてその加工がどうすればやりやすいかということと、住む場所の環境に応じて、家の形を工夫してきたのではないかということがわかります。

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