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エンジニアリングウッドとは

2018年1月30日「火曜日」更新の日記

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 季節による温度差が激しく雨や湿度の高い日本の気候では、断熱効果が高く適度に湿度を調節してくれる木造住宅が好まれるのは当然です。そして、最近の調査でも新築される木造住宅の実に8割以上が伝統的な軸組工法で建てられていることがわかりました。  一時、軸組工法では地震や耐久性が心配といった声が聞かれましたが、正しい材料を選び、正しく設計と施工を行えば、高耐久性で地震に強い家が建てられることは「木造軸組工法のポイント」で述べたとおりです。  しかし、一方で木材には欠点があることも事実です。特にムクの木は、十分に乾燥させていないと反りや狂い、さらには割れが生じたりします。また節があると、必要な強度を発揮することができません。  その木材の常識を打ち破ったのが、エンジニアリングウッドと呼ばれる集成材です。集成材と言われるのは、「丸太状の木をひき、ひいた板をほぽ同じ繊維方向に平行に重ね、集成接着した材」だからです。  集成材の歴史は意外に古く、1901年にはスイスで製造特許がとられ構造材としてヨーロッパに広まりました。アメリカには1920年代に伝わり、接着耐久性にすぐれた樹脂接着剤が開発され、集成材を構造材に使った大規模な木造の建築物がたくさん建てられるようになりました。  日本でも1960年代はじめ、学校を中心として集成材を使った建物がたくさん建てられましたが、法律の規制や鉄骨造の普及で需要が下火になりました。その後、1987年になって旧建設省から「燃えにくい木」としての認定を受け、エンジニアリングウッドとして復活しています。  このエンジニアリングウッドがすぐれているのは、その作り方からもわかります。まず丸太をカットして「ひき板」をつくります。これを50日から60日かけて天日乾燥し含水率を半分に下げ、その後、人工乾燥により乾燥しても変形しない含水率11~14%まで乾燥します。「ひき板」なので比較的短時間に乾燥できますが、丸太のままの状態では20%以下の含水率に乾燥させるのは容易なことではありません。  こうして所定の含水率に乾燥された「ひき板」は、大節や割れ、腐れといった欠点を取り除いた後、一枚一枚剛性を測定。強度が大きくなる張合せ方で接着されてできあがります。つまりエンジニアリングウッドは、木材の欠点を取り除いて工業的につくられた建材なのです。  このため、エンジニアリングウッドはさまざまなメリットを持っています。第1に、構造材として最も重要な強度はムクの木の1.5倍になります。また木材の欠点を取り除いて工業的につくるため、ムクの木のように強さや寸法精度、狂い等の品質にバラツキがありません。  断面の形状と寸法を自由につくれるのも大きな特徴です。長大材やアーチ材など任意のデザインでも施工しやすく、アメリカのワシントン州タコマにある多目的ドームは、高さが45.7m、直径が161.5mにもなる大規模な木造建築物になっています。  しかも、ムクのスギ材でも引っ張り強度で鉄の4倍、圧縮強度でコンクリートの約5倍もあることから、エンジニアリングウッドの建築物は鉄骨造やRC造に比べ大幅に軽量化できます。地震による破壊力は建物の重量に比例して大きくなってしまうので、軽量化は耐震性という面でも大きな力を発揮することになります。  耐火性の面でも、エンジニアリングウッドは評価されています。木は断面が大きくなるほど表面は焦げて炭化するため酸素の供給が絶たれ、燃えにくいと言われます。鉄は確かに燃えませんが、火災の際には500~800℃の熱で軟化して家の荷重で折れ曲がってしまうので、大断面の木のほうが火災に強いと言われています。  そのほか、熱伝導率の低さによる断熱保温性や抜群の音響効果、さらには空中湿度の高い時には水分を吸収し乾燥期に蓄えていた水分を放出する「超湿機能」を持っていることは、ムクの木と変わりません。  丈夫で変形・収縮しないエンジニアリングウッドの登場は、木造住宅の可能性をグッと広げました。市民派納得住宅「カトラン」も、家の骨組みになる構造材はすべてこのエンジニアリングウッドを採用しています。

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