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内装材の選び方のポイント

2018年1月28日「日曜日」更新の日記

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 内装材について考えるとき、忘れてはならないのが室内の空気汚染の問題です。建物の気密化が進む中で、新たな病気として「シックハウス症候群」が深刻な事態を招いているのです。  シックハウス症候群とは、ホルムアルデヒドといった揮発性の有機化合物(VOC)が長期にわたって体内に蓄積、ひとたび許容量を超えると、それ以降はわずかな量でも吸い込むと、目やノドの痛み、頭痛、吐き気、めまい、くしゃみ、全身倦怠などのアレルギー症状を引き起こすやっかいな病気です。このVOCを発散する存在として、化学薬品の含まれた内装材や接着剤が問題視されているわけです。  ところが、ある民間団体が内装材を選ぶ基準をインターネットで意識調査したところ、上位には「色やデザインがよい」「掃除しやすい」「汚れにくい」といった項目が並び、「ホルムアルデヒドなどの有害物質が出ない」は下位にランクされました。まだまだ内装材に対する認識が浅いのが現状のようです。  でも、なぜ最近になってシックハウスが問題になってきたのでしょうか。それは住宅の気密性が増したことと、内装工事の方法が大きく変わったことがI因になっています。  これまで日本の木造住宅は、漆喰などの塗り壁で内装を仕上げることが一般的でした。これなら天然素材ですから、有害物質の発生する心配はありません。しかし、そうした水を使う湿式工法は工期が長くコストもかかります。  そこで登場したのが、クロス張りなどの乾式工法です。水を使わず有機溶剤の入った接着剤でクロスを張るだけなので、簡単で工期を大幅に短縮できます。また建材も、安くて施工のしやすい合板(やはり接着剤で張り合わせてある)が幅を利かすようになりました。 ところが、そこに落し穴があったわけです。  それなら、昔ながらの塗り壁やムクの木材に戻せばいいと考えるかもしれません。しかし、ことはそう簡単ではありません。確かに有害物質の発散は少なくなるかもしれませんが、便利な暮らしに慣れてしまったユーザーが昔ながらの住宅に対応できるかどうか。  クロス仕上げの壁や合板のフローリングなら、汚れても雑巾でさっと拭くだけで済みますし、木材にありがちな反りや狂いもありません。しかし、塗り壁やムクの木の床ともなれば、こまめな手入れが必要になりますし、間違いなくコストもアップします。その知識もないままに健康住宅ブームに乗せられると、後で「こんなはずでは」といったことにもなりかねません。  最近では、事態の深刻さに行政や住宅メーカーが対策に乗り出しています。厚生省(現・厚生労働省)が原因物質と見られるホルムアルデヒドの室内濃度基準を0.08ppm以下と定めるとともに、メーカーもホルムアルデヒドの放散がほとんどない建材やノンホルマリンの接着剤の開発を推進。日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)に、これに対応した建材の規格ができました。  このホルムアルデヒドの問題は、「住宅性能表示制度」にも盛り込まれています。それが「空気環境に関すること」の項目で、内装材からのホルムアルデヒドの放散量を少なくする対策が求められています。特に、パーティクルボード(木材チップを接着剤で板状に固めた建材)や合板、構造用パネル、複合フローリングなどの特定木質建材にはJISやJASの規格と連動した4段階の「ホルムアルデヒド放散等級」が定められています。                                 また、新たな内装材として注目を集めている素材に珪藻土があります。「珪藻」とは海や湖に生息しているプランクトンなどの藻類のことで、その死骸が数百万年という長い年月の中で堆積、化石化したものが珪藻土です。  この珪藻土は、活性炭の数子倍という超微細な多孔で高い通気性を保つことから、調湿効果や有害物質の吸着、脱臭、防虫効果などがあると言われています。ただ、衝撃に弱く割れやすいという欠点や一般の内装材に比べ価格が割高なのは、昔ながらの塗り壁と同様です。  いずれにしても、せっかく建てた住宅が住む人の健康を蝕むとしたら、こんなに残念なことはありません。健康は楽しく暮らすための要でもあり、内装材の選択には慎重を期してほしいものです。

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