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高気密住宅についての考え方

2018年1月24日「水曜日」更新の日記

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 近年、省エネルギーの観点から導入が進められている高気密・高断熱の家が何かと注目を浴びています。なかでも高気密住宅には賛否両論あり、住まいづくりを進めるうえではやはり必要不可欠な知識の一つになっています。  かつて日本の木造住宅と言えば、工法上の特性から外気温の変化を著しく受ける隙間だらけの家が普通でした。しかし、1980年代後半に入ると省エネルギーが叫ぱれ、住宅政策においても冷暖房の効率化といった観点が加味されるようになりました。そして九2年、住宅の「新省エネ基準」が、99年にはさらに一歩進んで地球温暖化の防止を目的とした「次世代省エネ基準」が制定され、住宅の高断熱・高気密化が急速に進展することになったわけです。  特に、「次世代省エネ基準」では国内を6つのエリアに分け、エリアごとの気候に応じたQ値(熱損失係数)やC値(相当隙間面積値)、K値(熱貫流率)といった基準値を設定。 この基準をクリアした住宅は、住宅金融公庫から割増融資が受けられるなどの優遇措置をして、政府が普及を強力にバックアップしたのです。  これに呼応して住宅業界も、高気密・高断熱住宅に力を入れてきました。大手メーカー等では、床面積一平方メートル当たりどれだけ隙間があるかを示すC値で寒冷地向けの厳しい基準値をクリアした住宅を全国的に売り出しています。  確かに、これだけの気密性を実現すれば、冷暖房した室内の空気が外に逃げる量はグンと少なくなります。それだけ省エネルギーになるのは間違いありません。しかし、一方で気密性を高めるということは、外気との換気が進まないということでもあります。新たに、換気をどうするかといった問題が生じます。  最近になって、建材等に含まれるホルムアルデヒドといったVOC(揮発性有機化合物)による室内の空気汚染でシックハウス症候群が問題となっているのは、住宅の気密性を高めたことが一因と言われています。  この問題を複雑にしているのは、VOCの発生源が建材等に限らない点です。たとえ有害物質をほとんど含まない建材等を使って健康住宅をつくったとしても、持ち込まれた家具やカーテン類から室内の空気が汚染されてしまうケースも少なくありません。  そこで登場したのが、「計画換気」という考え方です。季節や時刻によって変わる室内環境のもと、必要換気量や換気経路などを計画し、機械によって室内の空気を強制的に換気しようというわけです。この計画換気システムがうまく機能すれば、室内はいつも快適でクリーンな環境に保たれることになります。  しかし、室内の空気の流れは非常にデリケートなものです。家の広さや間取り、窓の数などそれぞれ異なる条件をクリアして理論どおりの換気ができるかどうか。開発されてから日の浅い技術であるだけに、未知数の部分も少なくありません。換気機器のメンテナンスによっても左右されます。  そして、もう一つ考慮しなければならないのは人体への影響です。生物は保護すれば、それだけ環境への適応力を失うと言われています。生体機能が完成された大人なら影響は少ないかもしれませんが、幼児はどうでしょうか。1年中一定のエアコンディションの中にいて、体の調節機能がうまく発達するでしょうか。  すでに、この危惧は現実のものとなっています。エアコンで育った最近の子どもたちは体温を調節する汗腺の働きが弱く、熱中症になりやすいことが報告されています。  そうは言っても、冬の外気温がマイナス0度にもなるような寒冷地では、気密性は重要です。特別な換気設備をしなくても一時間に約3回、自然に換気されていたかつての隙間だらけの住宅では、快適な暮らしなど望むべくもありません。また、結露によって住宅の寿命を縮めてしまうという問題もあります。  オープンな間取りを採用する場合も、高断熱・高気密に関する何らかの対策は必要でしょう。間取りだけに気を取られて階段や吹抜けを設けたオープンリビングにしたところ、エアコンが大活躍して月の電気代がウン万円になったという失敗談もよく耳にします。  また、計画換気に関連して空気を入れ換える際にエネルギーロスを少なくすると言われる「熱交換機」についても問題点が指摘されています。カタログに表示されている熱交換率は、実際の環境下ではかなり割り引いて考える必要があり、省エネによって設置コスト(50~70万円)を回収するのは容易なことではありません。また、ほこりや雑菌、タバコのヤ二等が付着しやすいにもかかわらず構造が複雑で、ユーザー自ら定期的な清掃やメンテナンスが難しいこと、保証期間が1、2年程度と短いことも大きな問題です。  結局、高気密住宅に対する考え方としては、地域性や家族構成、ライフスタイルに合わせて気密性を高めるかどうかを判断すること。そして、気密性を高めるとデメリットも生じることをしっかり認識したうえで対処することが必要です。

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